過度な相続対策
「現金のまま持っているよりも、不動産を買った方が相続税の節税になりますよ。」
一般的にはそうですし、そのようにアドバイスをする会計事務所も多いようです。
例えば現金1億円を持っていたとしたら、相続税評価額は「1億円」です。
一方この現金で1億円の不動産を購入した場合、この不動産の相続税評価額は、1億円よりも下がることが多いです。
土地であれば主に路線価、建物であれば固定資産税評価額を基に評価し、購入価額とは分断されているためです。
もっと言うと、この不動産を他人に賃貸した場合は、評価額から借地権割合、借家権割合が控除されるので、場合によっては1億円の3~4割まで評価額を減少させることが可能となります。
結果として、現金1億円から不動産3~4千万円にまで評価額を下げ、その評価額に対し相続税を計算するので、かなりの相続税の節税には成功しているのです。
「うまい話には裏がある。」
とはよく言ったもので、おいしい話に簡単には飛びついてはいけないのは世の常です。
上記相続対策をした方に、相続人がいたとします。
現金を残さず相続が発生し、相続人に十分な資金な不足している場合、相続税が払えません。
相続人が複数となればより悲惨です。
現金であれば容易に分割できたのに、不動産であることで容易に分割できません。
不動産を共有にするのは問題点が多くおすすめはできません。
結局、遺産分割協議が整わず、相続人間の関係は悪化、当事者間で決着がつかないため弁護士案件となってしまいました。
安易な節税対策をしたばかりに、家族関係は壊れ、不要だったはずの弁護士費用まで掛かったのです。
仕事柄相続案件に携わることは少なくないのですが、お話を伺っていると、メリットは聞いているがデメリットやリスクの説明を十分に受けていないと思われるケースが多くあります。
その後の課税関係や発生し得る問題もしかりです。
相続に限らずですが、得をしそうな案件には、常にデメリットやリスクを考え、十分に吟味した上で選択していきたいものです。
私自身も、お客様のプラスになりそうな話は随時させていただきますが、状況に合わせ、考え得るマイナス面も十分に説明していきたいと思っています。