相続が急に起きたら・・・

開業してから、ありがたいことに相続税に関する問い合わせや、相続税の申告の依頼を多数いただいております。

相続に関しては、遺産総額や納税額が多額になるケースが多いためリスクが高く、
実は会計事務所によってはあまり歓迎されないこともしばしばあるようです。

私自身は相続税に関するご相談は非常にありがたく思っております。

というのも、基本的には毎年申告を行う必要のある法人税や所得税とは異なり、
相続税の申告依頼は不定期であり、

・相続に関して一定の知識はあるが実務経験が乏しい頭でっかち税理士

・そもそも相続に関する知識が無く、またその必要にも迫られていない税理士

に陥りやすい税目であるため、定期的に相談を受け、調べ、考えることで
実務レベルでの知識のアップデートを図らないと
どんどん忘れたり、税制改正についていけなくなったりするためです。

ただし、相続に関係する人数も多くなりがちで、非常にリスクが高く、
また時間もかかることから、他の税目よりもより一層気を引き締め慎重に業務を行う必要があることも事実です。

実際私も、いったん相続税の申告書が完成してからも、
何度も落ち度はなかったか、資産の評価方法は妥当であったか等見直します。
(経験のある年配税理士の方の話をうかがっても、やはり提出後も怖い、とおっしゃっていました。)

必要な手続きとは?

人が亡くなってからは、多くの手続きが必要になります。
その多さから、悲しんでいる余裕がほとんどなかった、との声を聞くこともあります。

・死亡届(世帯主変更届)の提出
・葬儀
・年金受給停止
・社保資格喪失
・遺言書確認、検認
・相続人の確定
・相続財産の確定
・有効な遺言が無いのであれば遺産分割協議
・必要があれば相続放棄の手続き(相続発生から3か月以内)
・準確定申告(相続発生から4か月以内)
・相続税の申告(相続発生から10か月以内)

その他、各契約の解約や、名義変更、金融機関への口座凍結連絡等の事務手続きから、
初七日、四十九日、百カ日等の慣習による法要手続きまであまたにわたります。

その中で税理士が関係してくる重要な点は、やはり例示列挙した後ろ2つ、
・準確定申告
・相続税の申告
となります。

準確定申告とは?

亡くなる年の1月1日から、亡くなった日までの所得についての申告・納税です。
例年確定申告が必要な所得があった方はその期間の所得を計算し、申告・納税する必要があります。
これは、例年の2月16日~3月15日までに行えばいい確定申告と異なり、
亡くなった日から4か月以内に申告しなければいけない点に注意が必要です。

相続税の申告

相続税の申告は亡くなった日から10か月以内にしければなりませんが、
この10か月の間に、原則として、相続人の確定、相続財産の確定、遺産分割まで行う必要があります。

遺産分割が未了だとしても10か月以内に法定相続分で分けたとしたらと仮定した場合の申告書を作成し、申告・納税。
遺産分割が終わった時点であらためて申告書を作成しなければなりません。

また、未分割での申告は、配偶者の税額軽減の特例や、小規模宅地等の特例など、
各種特例が適用できないため、納税額が高額になるおそれがあります。

全ての人が相続税の申告が必要?

相続税の申告は相続が起きた全てが対象ではなく、亡くなった方に一定金額以上の遺産を有していた場合のみになります。

その一定金額とは、

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人(以下、基礎控除)

となります。
法定相続人が1人しかいなければ、3,600万円。
2人であれば4,200万円と、法定相続人の人数が多くなればなるほど基礎控除が多くなっていきます。
遺産がこれよりも小さければ、申告も納税も必要ありません。

相続税は減らせる?

もし遺産総額が上記基礎控除を超えそうで、相続税の申告が必要になりそうであれば、
早めの対策をすることで相続税を大きく減らせる可能性があります。

有効な遺言を準備しておくだけでも、後の争いに係るコストを抑えられますし、未分割での不要な申告も避けられます。
生前贈与を進めることで遺産そのものを早めに他者に移してしまう方法や、
生命保険の非課税枠を利用し、課税対象資産から外してしまうという方法などがあります。

いずれにせよ、早めの対策が必要です。
相続発生後ではその手段が極めて限定的になってしまいます。

専門家が必要なとき

相続が発生すると、普段は縁のないような専門家が必要になることがあります。

争いが起きそう、あるいは現に起きているのであれば弁護士、
不動産の名義変更であれば司法書士、
税務申告であれば税理士へと相談することとなります。
※まれに、遺産分割協議の調整を依頼されることもありますが、
あくまでもそれは弁護士業務の領域であり、税理士は行えません。

それぞれの年代に合わせた弁護士や司法書士の先生とも提携先がありますので、
もし必要であればお気軽にご相談ください。

また、私も税理士として、税金はかかりそうなのか、何か対策は無いか、
それぞれの資産がいくらぐらいの評価額となるのか、どう分割すれば平等か等のアドバイスはさせていただきます。
弁護士は依頼者が有利となるよう調整することが多いのに対し、
税理士の強みは、あくまでも私情を挟まず、定量的・客観的かつ平等に判断できる点だと考えております。

数字で分割額、納税額が分かるため、こちらに有利すぎないか、こういった問題は出ないか、などの見方が可能です。

うまく専門家を活用して、関係者全員が納得いく形に近づいた手続きができるといいですね。

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