自然体数値から何ができるか

 会計士や税理士としての腕の見せ所は、

・「自然体での決算数値」を算定後、見栄えの良い、あるいは節税を享受できる決算数値に持っていくか
・その期の決算を確定させた後、どう翌期以降会社にプラスとなる提案ができるか

にあると私は考えています。

 数か月~数年経理を経験したような、ある程度会計の知識のある人なら、自然体で決算数値を固めることはできるようになります。
 極端な話をすれば、去年の決算書と申告書を経験の浅い人に渡し、「去年と同じように数字を拾って埋めておいて。」と指示を出せば、十分満足できる水準の今年の決算書や申告書が出来上がります。

 そこから我々は、どうお客様と相談しながら、税務署から見て違和感の無い、金融機関から見て不必要に評価を下げるようなことのない数値に調整・着地できるか。
 もちろん、税務署は以前と比べ細かくチェックするようになったと言われているので、脱税まがいのことはできませんが、説明し得る合法的な範囲内で、です。

 平成28年分の確定申告をひととおり終えました。

 その中に、平成28年度中に開業し、ご自身で事業を営まれている、「事業所得」のあるお客様がいらっしゃいました。
 事業を始められて最初の確定申告です。

 いったん帳簿の細かい点は無視し、集計された売上から経費を差し引き、減価償却費を加味した「自然体」としての利益を算出しました。
 その結果、そのままの利益で申告した場合に、社会保険の被扶養者から外れ、さらに所得税まで出てきて「配偶者控除」も適用外になってしまいます。

 そこで、細かい点に目を向け、何か費用化できるものはないかと考えました。

 すると、開業の際店舗を改装した費用を、「店内改装費」として一括で資産計上していたため、より細分化できそうでした。
 お客様に別途明細を頂き、看板や店内家具等、個別に除売却可能なものを費用計上、あるいは短い耐用年数を設定することで、減価償却を大きくし、利益を圧縮することが可能となりました。
 結果として社会保険の扶養対象となり、配偶者控除も問題なく適用できました。

 申告を終えお客様にその旨を連絡したところ、お礼とともに「お願いしてよかった。」とまで言ってもらえました。

 正直、開業初年度で資金繰りが特に気になる時期に、決して安くはない顧問料を毎月頂き、
「何のために払っているのだろうか…」
と、確定申告の報告までは思われていた気がします。
 それでも、私自らが最後まで微調整した数値に満足され、感謝をしていただけるというのは税理士冥利に尽きる思いです。

 もし当事務所が人を雇うようになっても、スタッフにやらせっぱなしで印だけ捺すのではなく(税理士法違反ですが…)、数値の最終的な微調整にまで直接関わり、
「お願いしてよかった。」
と言ってもらえるような仕事をしていきたいと思っています。

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