会計事務所は何をするところか

 会社や個人事務所を営業していくうえで、どのような税務的手続きが必要になるのでしょうか。
 税理士に仕事をお願いすると、何をしてもらえるのでしょうか。
 会計事務所に勤務をお考えの方は、どのような業務をするのでしょうか。

 実は私も、以前の会計事務所に勤務するまで、見当もついていませんでした。

 そのような不透明感を少しでも解消すべく、一般的に会計事務所は年間を通じてどのような業務を行っているかを、最もシンプルな形でまとめてみました。

 参考までにご覧いただき、会計事務所を利用する際の目安としていただければと思います。


※3月決算の法人1社(納期特例適用)と、個人事業のあるケースを前提としています。
※★の数が多いほどリスクが高く、時間がかかります。

1月

★☆☆ 支払調書合計表 提出(1月31日〆)to 税務署
★★☆ 給与支払報告書 提出(1月31日〆)to 市町村
★☆☆ 償却資産税の申告  (1月31日〆)to 市町村

2月

★★☆ 所得税の確定申告準備

3月

★★★ 所得税の確定申告(3月15日〆)to 税務署
★★☆ 消費税の申告  (3月31日〆)to 税務署
★★☆ 贈与税の申告  (3月15日〆)to 税務署
★★☆ 3月決算法人に関する着地打ち合わせ、節税提案
    *節税提案は随時行っていますが、特に直前で必要があれば重点的に

4月

★☆☆ 3月決算法人の申告準備
    *決算・申告に必要な資料リストの上、お客様と相談しながら準備

5月

★★★ 3月決算法人の決算 法人税・消費税の申告(5月31日〆)to 税務署&市町村

6月

★★☆ 源泉所得税の納期の特例 上期対応(7月10日〆)to 税務署
★★☆ 社会保険 報酬月額算定基礎届 提出(7月10日〆)to 年金事務所
    *原則は税理士業務外だが、別報酬で行う会計事務所もある
★★☆ 労働保険 年度更新(7月10日〆)to 労働基準監督署他
    *原則は税理士業務外だが、別報酬で行う会計事務所もある

7月

8月

9月

10月

11月

12月

★★★ 年末調整
    *扶養控除等申告書、保険料控除申告書回収、源泉徴収票の作成
★★☆ 源泉所得税の納期の特例 下期対応(1月20日〆)to 税務署


 会計事務所が年末から上半期は繁忙期と言われる所以がよく分かりますね。

 ただし、空欄となっている7月~11月は何もすることがないわけではありません。
 通常は下記業務があります。

・月次での記帳代行、給与計算
・決算月が3月以外の法人の決算、申告
・源泉所得税の納付の特例を適用していなければ、源泉所得税の集計、納付が毎月
・税務署からの問い合わせの準備、回答
・相続の相談、申告
・事業計画策定
・コンサルティング業務

なんとなくのイメージを掴んでいただければ幸いです。

税務顧問料のカラクリ

 最後に、会計事務所への報酬の話を簡単に触れてみたいと思います。

 上記諸手続きごとに細かく請求書を出す事務所もあれば、顧問料月額として織り込む事務所もあります。
 「決算料」として顧問料月額の数か月分を上乗せ請求する事務所もあります。

 ご注意いただきたいのは

「顧問料 月額9,000円から!!」

激安を売りにしつつ、顧問料以外の請求書が何度も届き、結果として年間多額の報酬を払うこととなる場合です。

 個人的には、この業界の「顧問料」の位置づけがイマイチ曖昧な気がしています。

 「決算料・諸手続き」をすべて織り込みつつ「いつでも相談」できるという意味での顧問料であれば理解しやすいのですが、「決算料は顧問料の数か月分」としたり、「諸手続き」ごとに請求書を出すのであれば、顧問料は「いつでも相談」料のみでしょうか。
 そうであれば顧問料は激安でもいい気がしますが、そんなに安くなっていないところもある気がします。

【顧問料のパターン】

①「顧問料」=「いつでも相談」+「諸手続き」+「決算料」…全て込み
②「顧問料」=「いつでも相談」+「諸手続き」      …決算料別途請求
③「顧問料」=「いつでも相談」             …随時請求

 ①はシンプルで分かりやすいのですが、何も作業が無い月は、お客様から「何でこんなに毎月払っているんだっけ。」と疑念を生じやすいのは確かです。
 ②でも金額は読みやすいのですが、決算料別にしては顧問料が高いと思われるおそれがあります。
 最も納得できるのは③かもしれませんが、どんな作業と作業量が必要かもご存じでないお客様に逐一請求書を出すのは、税理士の言い値を鵜呑みにするしかない気がします。

 私がお客様に最も説明しやすく、理解していただきやすいのが①でした。

 それぞれに良し悪しがあるので一概にどれがいいとは言えないのでしょうし、会計事務所も事業ですから、収益を上げられるに越したことはありません。

 ただ、私自信もよくわからない報酬をいただきたくありませんし、お客様もよくわからないのにお支払いをしたくないと思います。

 会計事務所を決める際は「激安」に惑わされないよう、十分ご注意ください。